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噛み合わなかった夫婦関係

Sはダブルベットが入って、イス一つ置けるぐらいのスペースの釣り用ボートに住んでいた。中には小さい流し台とカセットトイレがあった。そこで2歳の子供と奥さんと3人で住んでいた。ダイアモンドでさえ狭いと思うのに、その三分の一以下のサイズのボートで、どうやって暮らしていたのか謎だった。
Sが言うには、奥さんは今は子供とロシアの実家にいるそうだ。3月には戻って来ると言うが、その時点で11月中旬を過ぎていたので、奥さんはずいぶん長いこと実家に帰っているんだなあと思った。
Sは電気屋と言ってもただの電気屋ではない。大きいイベントや有名な大会などで電気類全てを任されたりして、忙しい時期はとても忙しい。収入がいいので、毎日コツコツ働かなくても一回の仕事の契約で、どーんと稼げるのだと言う。

周りの話を聞くと奥さんは、Sの行動に呆れ果ててロシアに帰ってしまったのだという。大きいボートを買うのが条件でまた戻って来ることになったが、冬の間小さい子供とボート暮らしは大変なので、春まで帰ってこないのだそうだ。
Sの奥さんはなぜだかボート仲間達にはよく思われてなかった。彼女はお金目当てで彼と一緒になっただの、彼をコントロールしようとしている、性格悪いだの散々言われていた。
実際わたしが会った彼女は噂とは違った。
当時24歳だった彼女は小さくてかわいくて14歳ぐらいの子供に見えた。わたしと旦那を「ボート生活で初めて会った普通の人」と言った。個性の強いボート仲間達の中で孤独だったらしい。
Sとは旅行先で出会い、ロシアに戻ってから妊娠が発覚した。それでSは彼女と一緒になることを決意したのだ。彼にとっては二回目の結婚だったのと妊娠も重なって、結婚式は役所でサインをするだけのシンプルなものだったらしい。

ボートコミュニティはとても小さい。少しのことが大きくなって噂になる。そのかわり気にしなければ、みんなすぐに忘れてしまう。
それなのにSの奥さんは気にして人前に出てこなかったり、誰にも挨拶もしないで逃げるようにボートに入ってしまうのだった。かと思うと、みんながパーティーをして騒いでいるときに旦那を連れ戻しに来るので、余計に悪い印象を周りに与えてしまっていた。
Sは彼女と子供のために大きいボートを購入したが、状況は変わらなかった。そして周りもSの奥さんは旦那に大きいボートを買わせて、子供と買い物に行き、ブランド品ばかり持っているなどと言われるようになり、初めは同情していたボート仲間の彼女達まで敵に回してしまった。
Sもできるだけ家族との時間をとるようにして、ボート仲間とツルむのを控えたりしたのだが、二人がわかり合うことはなかった。
しばらくして彼女は子供を連れてボートを飛び出し、離婚訴訟を起こした。
キズついたSはみんなの同情を買った。彼女は国から生活保護をもらい、家まで与えてもらうことになった。

彼女はたた単純に普通というものを求めていたのだと思う。
子供のために水も自由に使えて、酔っ払いがいつも騒いでいないような環境で家族3人でひそやかに暮らしたかっただけなのだろう。
彼女と話すたびに「普通の暮らし」という言葉がいつも彼女の口から出てくる。
ある日彼女は笑いながら冗談でも言うかのように言った。
「妊娠中、ボートに水がなくって、頭が痒くて仕方なくって、昼間の人がいないバブのトイレでこっそり髪を洗ったのよ。大きいお腹でキツかったあ。」
わたしは胸が痛かった。
見えないところでSも家族を思い、彼女も家族を思って我慢していたのだ。その全てがムダだったのか、それともいい結果に収まったのか、たぶん本人達でなければ分からないのだろう。

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プロフィール

スカイ

Author:スカイ
イギリスで旦那と娘3人でボート暮らしをしていた生い立ちを綴っています。
家賃も地方税も無い自由な生活を選んだはずが、なかなか大変なボート暮らし。大好きなお風呂にゆっくりと浸かることができる生活を毎日のように夢見て、早くボート生活から抜け出したいと思いながら結局7年間を費やしてしまいました。
めちゃくちゃなボート仲間達との暮らしも今はいい思い出です。

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